大阪・福島の着付け教室「ゆうきもの」です。
初心者向け着付けレッスンから着付け師・講師養成までおこなっています。
着物を自分で着られるようになりたい方は、初心者向けレッスンをご覧ください。
着物を着始めると、
「訪問着と小紋は何が違うの?」
「この着物は、どこへ着て行ける?」
「袷や単衣って何?」
「そもそも、染めの着物と織りの着物って?」
など、聞き慣れない言葉がたくさん出てきます。
着物には、種類・格・季節による着分けなど、洋服とは少し違った考え方があります。ただ、最初からすべてを覚える必要はありません。
洋服でも、普段のお出かけ、仕事、卒入学式、結婚式など、場面によって着るものを自然に選び分けていますよね。着物も基本的な考え方は同じです。「着物=フォーマル」ではありません。

この記事では、着物を着始めた方がまず知っておきたい、
- 着物の基本的な構造
- 「染め」と「織り」の違い
- 着物の種類と格
- TPOに合わせた選び方
- 季節による着分け
について、できるだけわかりやすくご紹介します。着付けを習い始めた方の、最初の「着物の基礎知識」として参考にしてください。
そもそも「着物」とは?
「着物」という言葉は、本来は文字どおり「着るもの」という意味ですが、現在では一般的に、日本の伝統的な衣服である和服を指して使われています。
現代の洋服と大きく異なるのが、その構造です。
洋服は、身体のラインに合わせて布を曲線的に裁断し、立体的に仕立てるものが多いのに対し、着物は基本的に直線で裁断した長方形の布を縫い合わせて作られています。
一見複雑そうに見える着物ですが、実は構造そのものはとてもシンプルです。
着物は1本の「反物」から作られる
着物は、一般的に反物(たんもの)と呼ばれる細長い1枚の布から作られます。反物はおよそ37cm前後の幅で12.5m前後の長さがあり、これを必要な寸法に合わせて直線で裁断し、
- 身頃
- 袖
- 衽(おくみ)
- 衿
- 掛衿
などのパーツに分け、縫い合わせることで1枚の着物になります。基本的には、1本の反物を直線断ちで8つの主要なパーツに分け、それを組み合わせて作ると考えると、その構造をイメージしやすいでしょう。
洋服のように大きく曲線で裁断しないため、仕立てた着物をほどくと、再び長方形の布に近い状態に戻すことができます。そのため昔から、仕立て直したり、寸法を変えたり、別の用途に作り替えたりしながら、布を大切に使い続けてきました。
私自身、母から譲り受けた着物の中には、洗い張り(着物をほどいて反物の状態に戻し、洗ってきれいにすること)をして、自分のサイズに仕立て直したものが何枚かあります。
このように、ほどいて洗い、仕立て直しながら世代を超えて長く着ることができるのも、着物ならではの特徴です。着られなくなった後も、帯や小物、バッグなどに作り替えて使うこともできます。一枚を長く使い続けるという意味では、着物はとてもサステナブル(持続可能)な衣服の一つとも言えるでしょう。

身丈が短かったので、帯で隠れる背面の胴部分に足し布をしています。

着物を見るときに、「もともとは1本の細長い布だった」と考えてみると、着物ならではの合理的な構造がよくわかります。
※着物の各部名称および裁断図については、M KIMONOオンライン和裁教室が公開している資料が参考になります。
・M KIMONO オンライン和裁教 > 資料一覧 > 着物の名称
・M KIMONO オンライン和裁教 > 資料一覧 > 浴衣・着物の裁断図(大人・女物)
着物には「染め」と「織り」がある
着物を知るうえで、まず覚えておきたいのが「染め」と「織り」という大きな分類です。違いは、簡単にいうと糸と布のどちらの段階で色や柄をつけるかです。
染めの着物
生地を織ったあとに、白い生地へ色や柄を染めるものを、一般的に「染めの着物」と呼びます。「後染め」ともいいます。
代表的なものには、
- 黒留袖
- 色留袖
- 振袖
- 訪問着
- 付け下げ
- 色無地
- 小紋
などがあります。

染めの着物には、結婚式などで着用する礼装から、普段のおしゃれ着まで幅広い種類があります。
織りの着物
一方、先に糸を染め、その糸を使って織り上げるものを、一般的に「織りの着物」と呼びます。「先染め」ともいいます。
代表的なものには、
- 紬
- 大島紬
- 結城紬
- 木綿
などがあります。織りの着物は、一般的には普段着やおしゃれ着として着用するものが中心です。
初心者のうちは、「染めの着物にはフォーマルなものが多く、織りの着物はカジュアルなものが多い」くらいに理解しておけば十分です。
ただし、着物には素材や技法、紋の有無などによる例外もあります。



「染めだから必ずフォーマル」「織りだから必ず普段着」と完全に分けられるわけではありませんので、まずは大きな傾向として覚えておきましょう。
着物には「格」がある
着物について調べると、よく出てくるのが「格」という言葉です。難しく聞こえますが、洋服でいうドレスコードのようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば洋服でも、
- 近所への買い物
- 友人とのランチ
- 仕事
- 入学式
- 結婚式
では、少しずつ服装を変えますよね。着物も同じで、着用する場面に応じて種類を選びます。
大まかに分けると、次のようになります。
礼装
格式の高い場で着用する着物です。
代表的なものには、
- 黒留袖
- 色留袖
- 振袖
などがあります。

裾に華やかな模様があり、上半身には柄が無い。
準礼装・略礼装
結婚式への参列や式典、入学式・卒業式など、改まった場面で幅広く使われます。
代表的なものには、
- 訪問着
- 付け下げ
- 色無地
などがあります。

留袖との明確な違いは、上半身にも柄がある。

セミフォーマルな場での装いに。
おしゃれ着・普段着
観劇や食事、街へのお出かけなど、日常の中で楽しむ着物です。
代表的なものには、
- 小紋
- 紬
- 木綿
- 浴衣
などがあります。

ただし、着物の格は着物だけで決まるわけではありません。合わせる帯や帯締め・帯揚げ、草履やバッグなども含めて、全体の装いとして考えます。
昨今では、浴衣も夏のおしゃれ着としての着用が一般化してきました。
TPOに合わせて着物を選ぶ
「格」と聞くと、着物には難しい決まりがたくさんあるように感じるかもしれません。
でも、洋服に置き換えて考えると、それほど特別なことではありません。近所への買い物と結婚式に同じ服を着て行かないように、着物も「いつ・どこで・どんな目的で着るのか」によって選びます。
おおまかなイメージは、次のようになります。
| シーン | 着物の例 | 洋服でたとえると |
|---|---|---|
| 夏祭り・花火 | 浴衣 | 気軽に着る夏のワンピース |
| 普段のお出かけ | 小紋・紬・木綿など | カジュアルなお出かけ着 |
| 観劇・食事 | 小紋・紬・訪問着など | ちょっとしたお出かけ着・オフィスカジュアル |
| 入学式・卒業式 | 訪問着・付け下げ・色無地など | フォーマルなスーツやワンピース |
| 結婚式 | 黒留袖・色留袖・振袖・訪問着など | 結婚式に着るドレスや礼服 |
もちろん、これはあくまでもイメージしやすくするための目安です。同じ「食事」でも、気軽な友人とのランチと格式あるホテルでの会食では、洋服も変わりますよね。
着物も同じです。会場や目的だけではなく、
- 自分が主役なのか、招待される側なのか
- どのような立場で参加するのか
- どの程度格式のある会なのか
などによっても、ふさわしい装いは変わります。
「この場所には、この着物でなければならない」と暗記するよりも、その場にいる人とのバランスを考えると、着物のTPOは理解しやすくなります。
最初は「4つ」に分けて考えるとわかりやすい
着物の種類や決まりを一度に覚えようとすると、どうしても複雑に感じます。
そこで私はレッスンでも、最初はざっくりと、
「夏物か、それ以外か」
「フォーマルか、それ以外か」
という2つの軸で考えるとわかりやすい、とお伝えしています。
つまり、大きく分けると次の4つです。
| フォーマル | それ以外 | |
|---|---|---|
| 夏物 | 夏の礼装・準礼装 | 夏のおしゃれ着・普段着(ゆかた) |
| 夏物以外 | 礼装・準礼装 | おしゃれ着・普段着 |
もちろん、実際の着物にはもっと細かな種類や格、季節の決まりがあります。
ただ、着始めたばかりの段階では、まず「季節」と「フォーマル度」の2軸で考えるだけでも、着物や帯、小物を選ぶときの整理がぐっとしやすくなります。


紋の数によっても格が変わる
着物の格を考えるうえでは、紋(もん)もひとつの要素になります。
着物に付ける紋には、
- 五つ紋
- 三つ紋
- 一つ紋
などがあり、一般的には紋の数が多いほど格が高くなります。
五つ紋は、背中・両袖・両胸の5か所。
三つ紋は、背中・両袖の3か所。
一つ紋は、背中の1か所です。
同じ種類の着物でも、紋の有無や数によって着用できる場面が変わることがあります。ただし、着物を着始めたばかりの段階では、細かな紋の種類や決まりまで一度に覚える必要はありません。
まずは、「紋も着物の格を表す要素のひとつ」と知っておけば大丈夫です。
では、もう一つの軸である「季節」について見ていきましょう。
着物は季節によって仕立てを変える
もうひとつ、着物ならではの特徴が季節による着分けです。
着物は主に、
- 袷(あわせ)
- 単衣(ひとえ)
- 夏物・薄物
の3種類の仕立てに分けられます。
袷(あわせ)
裏地を付けて仕立てた着物です。秋から春にかけて着用する、もっとも一般的な仕立てです。

単衣(ひとえ)
裏地を付けずに仕立てた、透けない着物です。袷では暑く、夏物を着るほどではない時期に着用します。

夏物・薄物
裏地を付けず、絽や紗など透け感のある生地で仕立てた夏用の着物です。見た目にも涼しげで、夏ならではの装いを楽しめます。

昔ながらの衣替えと、現代の着分け
着物には、昔から季節ごとの衣替えの目安があります。
従来は、
- 10月〜5月:袷
- 6月・9月:単衣
- 7月・8月:夏物・薄物
とするのが基本でした。
ただ、現在の気候では、暦どおりに着分けると暑すぎることも少なくありません。特に近年は、5月でも真夏のような暑さの日があったり、10月になっても暑い日が続いたりします。
そのため私は、普段のお出かけであれば、昔ながらの衣替えを知ったうえで、実際の気温や体感に合わせて調整してよいと考えています。
ひとつの目安としては、
- 20℃以下 → 袷
- 20℃以上 → 単衣
- 25℃以上 → 夏物・薄物
くらいから考えると選びやすいでしょう。

もちろん、暑さ・寒さの感じ方には個人差がありますし、式典など改まった場では季節感や周囲とのバランスへの配慮も必要です。
まずは「○月だから絶対にこれ」と考えるよりも、季節感を大切にしながら、気候に合わせて無理なく着ることをおすすめします。


すべてのルールを覚えてから着る必要はありません
ここまで、
- 着物の構造
- 染めと織り
- 着物の格
- TPO
- 紋
- 季節による着分け
についてご紹介してきました。
こうして並べると、「やっぱり着物って覚えることが多い」と感じるかもしれません。でも、最初からすべてを覚える必要はありません。
洋服でも、「これはカジュアル」「これは仕事向き」「これは結婚式向き」と、経験を重ねながら自然に身につけてきたはずです。着物も同じです。まずは、「いつ・どこへ・何のために着て行くのか」を考えるところから始めてみてください。
実際に着て出かけたり、いろいろな着物を見たりするうちに、種類や格、季節感も少しずつわかるようになっていきます。着物には昔から受け継がれてきた基本がありますが、現代の暮らしに合わせて楽しめる部分もたくさんあります。
基本を知ることは、「間違えないため」だけではありません。選べる幅を広げて、自分らしく着物を楽しむための知識でもあります。
難しく考えすぎず、まずは着物を着ること、そして着物で出かけることを楽しんでみてください。




