大阪・福島の着付け教室「ゆうきもの」です。
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振袖や訪問着の衿元に、細くのぞくもう一色。
この部分に使われているのが「伊達衿(だてえり)」です。「重ね衿(かさねえり)」とも呼ばれ、衿元に華やかさを添える和装小物のひとつです。
ただ、着物を着るときに必ずしも必要なものではありません。
着物や帯だけで十分にまとまっていれば、つけなくても大丈夫。反対に、「もう少し華やかさが欲しい」「顔まわりの印象をやわらげたい」というときには、細い一筋の色が効果を発揮します。

今回は、半衿との違いから、着る場面に合わせた選び方、つけるときのポイントまでご紹介します。
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伊達衿とは?「重ね衿」とも呼ばれる衿元の装飾
伊達衿は、着物を重ねて着ているように見せるための装飾用の衿です。
実際にもう一枚着物を着る代わりに、衿の部分だけを重ねることで、装いに奥行きや華やかさを加えます。
「伊達衿」の「伊達」は、伊達メガネの「伊達」と同じ言葉です。
「伊達」には、人目を引くように装う、見栄えよく飾るといった意味があります。伊達メガネが、視力を補うためではなく、おしゃれのためにかけるメガネであるように、伊達衿も、実際に重ね着をするためではなく、衿元を飾るためのもの。名前からも、その役割がわかります。
「伊達衿」と「重ね衿」は、基本的には同じものを指す呼び方です。商品によって「伊達襟」「重ね襟」と表記されることもあります。
見える面積は小さくても、顔に近い位置に入る色なので、着姿全体の印象にも影響します。
華やかさを足すだけでなく、濃い色の着物をやわらかい印象にしたり、淡い色の着物の衿元を引き締めたり。色の組み合わせを楽しめる小物でもあります。
伊達衿と半衿は、別のものです
衿元に見えるものなので混同しやすいのですが、伊達衿と半衿は、役割が異なります。
半衿は、長襦袢の衿につけるもの。長襦袢の衿を汚れから守る役割があり、着物の衿の内側から見せて使います。
伊達衿は、着物の衿に重ねて使う装飾用のもの。半衿と着物の衿の間に、もう一枚重ねているように見せます。
伊達衿を使う場合も、半衿の代わりになるわけではありません。また、衿元を整えるために長襦袢の衿に入れる「衿芯」とも別のものです。
半衿、衿芯の役割や選び方については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

どんな着物につける?伊達衿は必要?
伊達衿は、振袖や訪問着など、お祝いの場の装いでよく使われます。
ただし、「この着物には必ずつけなければいけない」というものではありません。着る場面と、どのような印象に仕上げたいかを考えて選びましょう。
成人式の振袖には、華やかさを添えて
成人式の振袖では、伊達衿を使うことがほとんどです。
着物や帯、帯締め、帯揚げなどと合わせて衿元にも色を重ねることで、晴れの日らしい華やかな装いになります。
最近は、パールやレース付きの伊達衿も増えてきました。色だけでなく、装飾や質感でも個性を出せるようになっています。振袖の柄や半衿にも存在感がある場合は、全部を目立たせようとせず、全体のバランスを見ながら組み合わせるとよいでしょう。
訪問着には、仕上げたい印象に合わせて
訪問着に伊達衿をつけるかどうかは、着物の色柄や、仕上げたい印象に合わせて考えれば大丈夫です。
私自身、伊達衿を使う機会はそれほど多くありません。例えば、持っている黒の訪問着。そのままだと少しシックになりすぎると感じるときに、ピンクの伊達衿を入れています。

コーディネート
黒のすっきりした印象は生かしながら、顔まわりにピンクが入ることで、少しやわらかい雰囲気になるのです。
それ以外の着物では、私はほとんど使っていません。
「訪問着だからつける」ではなく、「この着物を、今日はこんな印象で着たいから使う」。 そんな考え方で取り入れると、選びやすくなると思います。
入学式・卒業式のお母さまは、無理に足さなくても
お子さまの入学式や卒業式に参列されるお母さまから、「伊達衿も必要ですか?」と聞かれることがあります。
私は、特に使わなくても大丈夫だと考えています。
あくまでも主役はお子さま。着物と帯、小物の組み合わせで装いがまとまっていれば、伊達衿を足さず、すっきりと着るのも素敵です。
もちろん、つけてはいけないということではありません。落ち着いた色の着物に少し華やかさを加えたいときや、顔まわりを明るく見せたいときには、伊達衿が効果的なこともあります。
式典だからといって買い足す前に、まずは手持ちの着物や帯と合わせて考えてみてください。
留袖には、基本的に使いません
黒留袖や色留袖は、衿や袖口、裾などが二枚重ねて見えるように仕立てる「比翼仕立て」になっていることが一般的です。

比翼仕立てによって、すでに重ね着をしているような装いになっているため、留袖に伊達衿を合わせることは基本的にありません。
伊達衿の種類|1本で違う表情を楽しめるものも
伊達衿には、シンプルなものから装飾性の高いものまで、さまざまな種類があります。
購入するときは、色だけでなく、どのように使える商品なのかも確認してみましょう。
一色のシンプルなもの
一色の生地でできた伊達衿は、すっきりと色を足したいときに使いやすいタイプです。無地のほか、生地の織りによって模様を表した「地紋入り」のものもあります。
同じ色でも、光沢や地紋によって印象が変わるので、着物の生地感と合わせて選ぶとよいでしょう。
表裏で色が違うもの
表と裏で色が違う、リバーシブルの伊達衿もあります。使う面を変えることで、1本で二つの色を楽しめます。
着物や帯に合わせて使い分けられるので、両面とも自分の着物に合わせやすい色かどうかを見ておくと、活用しやすくなります。
二色使い・4通りに使えるもの
二色を重ねて見せられるタイプもあります。
商品によっては、表裏や使う向きを変えることで、一色で見せたり、二色を組み合わせて見せたりと、4通りの表情を楽しめるものも。
金糸のラインが入ったものもあり、細い金色が一筋加わるだけでも、衿元の華やかさが変わります。
ただし、すべての伊達衿が4通りに使えるわけではありません。商品の説明や使い方を確認して選びましょう。
パール・レースなど、装飾のあるもの
パールやレース、刺繍などをあしらった伊達衿は、衿元のデザインそのものを楽しむタイプです。
特に振袖では、着物や半衿の雰囲気に合わせて、装飾のある伊達衿を選ぶ楽しみもあります。
装飾の大きさや厚みによって、つけたときの見え方も異なります。商品単体の写真だけでなく、実際に着用した写真も参考にするとイメージしやすいでしょう。
伊達衿の色は、どう選ぶ?
伊達衿は、見える面積が小さい分、少し違う色にも挑戦しやすい小物です。
ただ、目立つ色ならよいというわけではありません。着物・半衿・帯・帯揚げ・帯締めを合わせて、全体で見てみましょう。
着物の柄や帯にある色を拾う
迷ったときは、着物の柄や帯、小物に使われている色から選ぶと、装いにまとまりが出やすくなります。
離れた場所に同じ系統の色があることで、伊達衿だけが浮いて見えにくくなるためです。
すべてを同じ色にそろえる必要はありませんが、色選びの手がかりになります。
なじませるか、アクセントにするかを考える
着物と近い色を選ぶと、さりげなく奥行きを添えるような印象に。
着物と違う色を選ぶと、衿元のアクセントになります。先ほどの黒の訪問着にピンクを合わせた例も、色の違いを生かした組み合わせです。
「明るくしたい」「引き締めたい」「やわらかくしたい」など、目指す印象を考えると、選ぶ色も絞りやすくなります。
顔まわりに当てて、確かめる
伊達衿は顔に近い位置で使うので、置いて眺めるだけでなく、着物や半衿と一緒に顔まわりに当ててみるのがおすすめです。
好きな色でも、組み合わせると予想以上に目立つことがあります。反対に、単体では地味に感じた色が、着物と合わせるとちょうどよいことも。
実際に見えるくらいの細い幅にして、鏡で確かめてみてください。
伊達衿は、どれくらい見せればいい?
一般的には、着物の衿から数ミリ程度、細くのぞかせるように使います。シンプルな伊達衿なら、まずは5ミリ前後を目安に合わせてみると、バランスを確認しやすいでしょう。
ただし、これは絶対的な決まりではありません。
細く見せると、さりげなくすっきりした印象に。幅を広めに見せると、色の存在感が増して華やかになります。二色使いのものや、パール・レース付きのものは、デザインに合わせた見せ方も必要です。
大切なのは、伊達衿だけでなく、半衿と着物の衿を含めたバランスを見ること。
伊達衿を広く出しすぎて半衿がほとんど見えなくなったり、左右で見える幅が大きく違ったりすると、衿元が落ち着かない印象になりやすくなります。
鏡で衿元を確認したら、少し離れて全身も見てみましょう。
伊達衿のつけ方と、ずれを防ぐポイント
伊達衿は、着物を着る前に、着物の衿に重ねて固定しておく方法が一般的です。
固定には、糸で縫い留める方法や、専用の伊達衿止めを使う方法、または着付けクリップを使う方法などがあります。商品の形状や着付け方によっても異なるため、ここでは基本的な流れと、仕上がりを整えるためのポイントをご紹介します。
基本の流れ
- 使う面と向きを決める
- 着物の衿の内側に伊達衿を沿わせ、背中心を合わせる
- 左右の見える幅をそろえ、ねじれやたるみがないように固定する
- 着付けの衿合わせで、半衿・伊達衿・着物の衿の重なりを整える
使う面と向きを、先に決める
リバーシブルや二色使いの伊達衿は、どの色を見せるかによって、つける向きが変わります。
先につけてから迷うと、やり直しになってしまうので、着物と半衿に合わせて、使う面と向きを決めておきましょう。
衿の中心を合わせ、ねじれないように固定する
着物の衿と伊達衿の背中心を合わせ、左右にねじれやたるみが出ないように整えます。
縫い留める場合は、表に縫い目が出ないよう、衿の内側で固定します。専用の伊達衿止めを使う場合は、商品の説明に沿って取りつけましょう。
固定する段階で左右の位置が大きくずれていると、着付けたときに見える幅もそろえにくくなります。
着付けの途中で、半衿と一緒に整える
伊達衿の見え方は、着物を着る途中の衿合わせで整えます。
片側ずつ、半衿・伊達衿・着物の衿の重なりを確認してから、胸紐などで固定しましょう。
着付けが終わってから伊達衿だけを強く引いて直そうとすると、ほかの衿まで動いてしまうことがあります。衿合わせの段階で整えることが大切です。
着付けをご依頼される場合は、伊達衿も着物と一緒に用意し、どの色や面を使いたいかを伝えておくとスムーズです。
補足|着付け技能検定を受検する方へ
ここまでご紹介したのは、実際の装いとして伊達衿を楽しむお話です。
一方、着付け技能検定の実技試験では、使用できる伊達衿に規定があります。
現状の1級実技試験の規定では、無地・地紋入りのものは使用できますが、二色使い(金糸織入り等を含む)や、スパンコール・刺繍などの装飾加工をしたものは使用できません。また、伊達衿止め具も使用不可とされています。
普段の装いや成人式で使えるものでも、試験では使用できない場合があるということです。
規定は年度によって変わる可能性があります。受検用に購入する場合は、一般的な商品紹介だけで判断せず、必ず受検する年度の実技試験問題と持参品の規定を確認してください。

伊達衿は、必要に応じて楽しむ小物
伊達衿は、着物を着るために必ずそろえなければならないものではありません。着物と帯だけで十分にまとまる日もあれば、衿元に一筋の色があることで、しっくりくる日もあります。
「少し印象をやわらげたい」「もう少し華やかさが欲しい」と感じたときに、取り入れてみてください。小さな面積だからこそ、色の違いを気軽に楽しめる。伊達衿は、そんな装いの調整役にもなる小物です。
和装小物を何から何まで専用品でそろえなくてよい、という考え方については、こちらの記事でもご紹介しています。



