着物の格とTPOとは?初心者向けにシーン別の選び方をわかりやすく解説

大阪・福島の着付け教室「ゆうきもの」です。
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着物を自分で着られるようになりたい方は、初心者向けレッスンをご覧ください。


着物を着始めた方から、レッスンでよく聞かれる質問のひとつが、「この着物は、どこへ着て行けますか?」というものです。

着物には「格」があり、結婚式や入学式などのフォーマルな場と、食事や観劇、普段のお出かけでは、着るものが少しずつ変わります。

「格」「礼装」「準礼装」などと聞くと、難しい決まりがたくさんあるように感じるかもしれません。

でも、洋服でも、

  • 普段のお出かけ
  • 仕事
  • 入学式
  • 結婚式

では、それぞれ服装を変えていますよね。着物も基本的な考え方は同じです。

この記事では、着物初心者の方に向けて、

  • 着物の「格」とは何か
  • フォーマルとカジュアルの違い
  • シーン別の着物の選び方
  • 自分の「立場」から考えるTPO
  • 帯や紋による格の違い

などを、できるだけわかりやすくご紹介します。

目次

着物の「格」とは?

着物の「格」とは、簡単にいうと、その着物がどの程度フォーマルな装いなのかを表すものです。洋服でいう「ドレスコード」のようなものだと考えると、わかりやすいでしょう。

たとえば、

  • 結婚式にはドレスや礼服。
  • 入学式にはフォーマルなスーツやワンピース。
  • 友人とのランチなら、もう少し気軽なお出かけ着。

と、洋服でも場面に応じて装いを選びます。

着物も同じです。

「着物だから特別に難しいルールがある」というより、その場にふさわしい装いを選ぶための目安がある、と考えてみてください。

最初は「フォーマルか、それ以外か」で考える

着物にはさまざまな種類があります。黒留袖、色留袖、振袖、訪問着、付け下げ、色無地、小紋、紬、木綿、浴衣……。

これを最初からすべて覚えようとすると、かなり複雑です。そこで私はレッスンでも、まずはざっくり、「フォーマルか、それ以外か」で分けて考えるとわかりやすい、とお伝えしています。

さらに季節を加えると、「夏物か、それ以外か」という軸もあります。

つまり、最初は次の4つくらいに分けて考えると整理しやすくなります。

フォーマルそれ以外
夏物夏の礼装・準礼装夏のおしゃれ着・普段着
夏物以外礼装・準礼装おしゃれ着・普段着

もちろん、実際にはこの中にも細かな種類や違いがあります。

でも、着物を着始めたばかりなら、まずは「季節」と「フォーマル度」の2軸で考えるだけでも、かなりわかりやすくなります。

この記事では、主に「フォーマルか、それ以外か」という格の違いについて見ていきましょう。

フォーマルな着物にはどんな種類がある?

まずは、結婚式や式典など、改まった場で着る代表的な着物です。

黒留袖

黒地で、裾部分に柄が入った着物です。既婚女性の第一礼装で、結婚式では新郎新婦の母親や近い親族などが着用する代表的な着物です。

一般的には五つ紋を入れて着用します。

黒留袖と袋帯のフォーマル着物
黒留袖:既婚女性の第一礼装

色留袖

黒以外の地色で仕立てられた留袖です。黒留袖と同じように裾部分に柄が入り、紋の数などによって格が変わります。

結婚式や格式のある式典などで着用されます。

振袖

袖丈の長い華やかな着物で、未婚女性の第一礼装です。成人式をはじめ、結婚式への参列やパーティーなど、華やかな場で着用されます。

成人式で振袖を着用している2人の女性
振袖:未婚女性の第一礼装

訪問着

肩から袖、裾へと柄がつながるように配置された「絵羽模様」が特徴の着物です。結婚式への参列、入学式・卒業式、七五三、お宮参り、パーティーなど、幅広いフォーマルシーンで着用できます。

フォーマルな着物の中では比較的用途が広く、一枚持っていると使いやすい着物です。

爽やかなグリーン地に木々が芽吹く春らしい柄の訪問着
訪問着

付け下げ

訪問着よりも柄付けが控えめなものが多く、改まった場から少し気軽なお出かけまで幅広く着用できます。仕立てたときに柄が上向きになるよう配置されているのが特徴です。

色無地

黒以外の一色で染められた、基本的に柄のない着物です。紋を入れることで格を上げることができ、入学式・卒業式やお茶会などの改まった場にも使われます。

一方、紋を入れずに名古屋帯などを合わせれば、もう少し気軽なお出かけ着として楽しむこともできます。

紫系の色無地着物に袋帯を合わせたコーディネイト
色無地

江戸小紋

遠目には無地に見えるほど細かな柄を、型紙を使って繰り返し染めた着物です。

もともとは江戸時代の武士の裃(かみしも)に用いられた柄が発展したもので、代表的な柄には「鮫」「行儀」「通し」などがあります。

江戸小紋は、柄や紋の有無、合わせる帯によって、普段のお出かけから改まった場まで幅広く着用できるのが特徴です。

たとえば、紋を入れずに名古屋帯を合わせれば食事や観劇などのおしゃれ着として。一つ紋を入れ、格のある袋帯を合わせれば、入学式・卒業式などの改まった場にも着用できます。

一枚で着こなしの幅を広げやすいため、色無地と同様に、フォーマルにもカジュアルにも使いやすい便利な着物です。

なお、すべての江戸小紋が同じ格になるわけではありません。柄の種類や紋の有無などによって位置づけが変わるため、フォーマルな場ではそれらも含めて考えます。

江戸小紋 極鮫
江戸小紋(鮫)

江戸小紋 万筋
江戸小紋(万筋)

普段のお出かけに着る着物

次に、食事や観劇、街歩きなど、普段のおしゃれとして楽しむ着物です。

小紋

着物全体に同じような柄が繰り返し染められている着物です。食事や観劇、ショッピングなど、普段のお出かけ着として幅広く楽しめます。

洋服でいえば、少しおしゃれをして出かけるワンピースくらいのイメージです。

華やかな総柄小紋に名古屋帯を合わせたコーディネイト
小紋

先に染めた糸を使って織られた着物です。大島紬や結城紬など、産地や技法によってさまざまな種類があります。

基本的には、おしゃれ着・普段着として着用します。

鮮やかなブルーの紬の着物に半幅帯を合わせたコーディネイト

木綿着物

綿素材で作られた、より気軽な普段着です。お手入れしやすいものも多く、日常的に着物を楽しみたい方には使いやすい着物です。

紺ベースの格子柄の伊勢木綿着物に名古屋帯を合わせたコーディネイト
木綿(伊勢木綿)

デニム着物

デニム生地で作られた、現代的でカジュアルな着物です。帯や小物も自由に合わせやすく、洋服感覚で着物を楽しみたい方にもおすすめです。

ロイヤルミルクティ色のデニム着物に茶系の名古屋帯を合わせたコーディネイト
デニム着物

浴衣(ゆかた)

夏祭りや花火大会などで気軽に楽しめる、夏のカジュアルな着物です。洋服でたとえるなら、気軽に着る夏のワンピースくらいの位置づけと考えるとわかりやすいでしょう。

竺仙の松煙染小紋浴衣(竹縞に蔦)に半幅帯を合わせたコーディネイト
浴衣

シーン別|どんな着物を選べばいい?

着物の格を、洋服に置き換えて考えてみましょう。

シーン着物の例洋服でたとえると
夏祭り・花火浴衣気軽に着る夏のワンピース
普段のお出かけ・街歩き木綿・デニム・紬・小紋などカジュアルなお出かけ着
観劇・食事小紋・紬・色無地・江戸小紋などちょっとしたお出かけ着・オフィスカジュアル
入学式・卒業式・七五三訪問着・付け下げ・色無地・江戸小紋などフォーマルなスーツやワンピース
結婚式黒留袖・色留袖・振袖・訪問着など結婚式に着るドレスや礼服

もちろん、これはあくまでも大まかな目安です。

同じ「食事」でも、友人との気軽なランチと、格式あるホテルでの会食では、洋服も少し変わりますよね。着物も同じです。

場所の名前だけでなく、その場の雰囲気や目的まで考えて選ぶことが大切です。

「どこへ行くか」だけでなく、自分の立場を考える

着物のTPOを考えるときに、もうひとつ大切なのが、その場で自分がどのような立場なのかということです。

たとえば、同じ結婚式でも、

  • 新郎新婦の母親
  • 親族
  • 友人
  • 主賓
  • 仕事として参加する人

では、求められる装いが違います。

新郎新婦の母親であれば黒留袖が代表的ですが、友人として参列する場合には訪問着などを選ぶことができます。

入学式や卒業式でも、主役はあくまでもお子さまです。保護者は華やかさを持たせながらも、主役より目立ちすぎない装いを考えます。

着物選びに迷ったら、「どこへ行くのか?」だけでなく、「そこで私はどんな立場なのか?」まで考えてみると、選びやすくなります。

着物だけではなく、帯でも格は変わる

着物の格は、着物だけで決まるものではありません。合わせる帯や帯締め、帯揚げ、草履、バッグなどを含めた全体の装いで考えます。

たとえば、同じ着物でも、

  • 袋帯を合わせる
  • 名古屋帯を合わせる

ことで、装いの印象やフォーマル度が変わることがあります。フォーマルな場では、着物だけを見て判断するのではなく、帯や小物も含めて格を合わせることが大切です。

反対に、普段のお出かけでは、帯や小物を少しカジュアルにすることで、肩肘張らない着こなしを楽しむことができます。

色無地や江戸小紋は、合わせ方次第で幅広く使える

着物の中でも、色無地や江戸小紋は、合わせ方によって着用できる場面を広げやすい着物です。色無地は一色染めなので、合わせる帯によって印象を大きく変えることができます。

たとえば、

  • 名古屋帯を合わせれば、食事や観劇などのお出かけ着に。
  • 袋帯を合わせれば、入学式や卒業式などの改まった装いに。

というように、コーディネートによってフォーマル寄りにもカジュアル寄りにもできます。

紫系の色無地を慶弔使い分けたコーディネイト例(左)袋帯を合わせてお祝いに(右)墨絵の名古屋帯を合わせて色喪服として偲ぶ会に
シックな色無地なら慶弔使い分けも
左:袋帯を合わせてお祝いに
右:墨絵の名古屋帯を合わせて偲ぶ会に

紫系の色無地を慶弔使い分けたコーディネイト例(左)袋帯を合わせてお祝いに(右)墨絵の名古屋帯を合わせて色喪服として偲ぶ会に
同じ着物でも帯や小物次第で着用シーンが広がる

江戸小紋も同様に、柄や紋の有無、合わせる帯によって着用シーンを広げることができます。一枚の着物を、帯や小物を変えながらさまざまな場面で着られるため、とても使い勝手のよい着物です。

一つ紋付きの江戸小紋(鮫)に兵児帯を合わせてカジュアルダウンしたコーディネイト
一つ紋付きの江戸小紋(鮫)に兵児帯を合わせてカジュアルなパーティで
江戸小紋(万筋)に半幅帯を合わせてカジュアルに
江戸小紋(万筋)に半幅帯を合わせてよりカジュアルに

ただし、フォーマルな場で着用する場合は、色無地・江戸小紋ともに、紋の有無や種類、その場での自分の立場なども含めて考える必要があります。

紋によっても着物の格は変わる

着物の格を考えるうえでは、紋(もん)も重要な要素です。

着物に入れる紋には、大きく、

  • 五つ紋
  • 三つ紋
  • 一つ紋

があります。

一般的には、紋の数が多いほど格が高くなります。

  • 五つ紋:背中・両袖・両胸の5か所
  • 三つ紋:背中・両袖の3か所
  • 一つ紋:背中の1か所

に、入れます。そのため、同じ色無地や色留袖であっても、紋の有無や数によって着用できる場面が変わることがあります。

着物を着始めたばかりなら、細かな紋の種類まで一度に覚える必要はありません。まずは、「紋も着物の格を決める要素のひとつ」と覚えておけばよいでしょう。

「高価な着物=格が高い」ではありません

初心者の方に、ぜひ知っておいていただきたいのが、着物の価格と格は、別のものということです。

たとえば、大島紬や結城紬には、非常に高価で希少なものもあります。しかし、どれだけ高価な紬であっても、基本的にはおしゃれ着・普段着という位置づけです。

「高級な着物だから、結婚式にも着て行ける」というわけではありません。

反対に、比較的シンプルな色無地でも、紋を入れ、フォーマルな帯や小物を合わせることで、改まった場にふさわしい装いになります。

着物を選ぶときは、「値段が高いか安いか」ではなく、「どんな種類の着物で、どのような場面に向いているのか」を見るようにしましょう。

最初の一枚も「どこで着たいか」から考える

初心者の方から、「最初に一枚買うなら、どんな着物がおすすめですか?」と聞かれることもよくあります。

私の場合は、どこで着たいのかによっておすすめを変えています。普段のお出かけを中心に、気軽に着物を楽しみたいのであれば、木綿やデニム着物

一方、お子さまの入学式・卒業式など、少し改まった機会にも着たいのであれば、色無地や江戸小紋も使い勝手がよく、おすすめです。

さらに現在は、昔に比べて気温の高い時期が長くなっています。従来は袷を着るとされていた時期でも、実際には単衣の方が快適な日も多く、私自身も袷より単衣を着ている期間の方がかなり長くなりました。そのため、今から色無地や江戸小紋を最初の一枚として用意するのであれば、私は単衣で仕立てるという選択肢もおすすめしています。

着物の種類だけではなく、実際にどの季節・どの場面で着るのかまで考えて選ぶと、せっかく買った着物を「着る機会がない」ということも少なくなります。

フォーマルな場で迷ったら、確認するのが一番

着物には基本的な格やTPOがありますが、実際の装いは、地域や家族の考え方、主催者、会場などによっても変わることがあります。

特に、

  • 結婚式
  • 茶会
  • 式典
  • 格式あるパーティー

などでは、独自のドレスコードや慣習がある場合もあります。迷ったときは、無理に自分だけで判断せず、主催者や詳しい方に確認するのが一番確実です。

「正解を当てなければ」と考えすぎる必要はありません。その場に合わせようとする気持ちこそが、TPOを考える基本です。

まとめ|着物の格は「場に合わせるための考え方」

着物の「格」という言葉を聞くと、細かなルールをたくさん覚えなければならないように感じるかもしれません。でも、本来はそれほど難しく考える必要はありません。

まずは、「フォーマルか、それ以外か」を考える。

次に、「どこへ行くのか」

そして、「そこで自分はどんな立場なのか」を考える。

これだけでも、着物選びはかなり整理しやすくなります。そして、着物だけではなく、帯や小物、紋などを含めて全体のバランスを整えていきます。

着物の格は、人を縛るためだけのルールではありません。その場にいる人や主催者への配慮として、装いを選ぶためのひとつの基準です。

基本を知ったうえで、あまり難しく考えすぎず、着物でさまざまな場所へ出かけてみてください。

実際に着る経験を重ねていくことが、TPOを身につける一番の近道だと思います。


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この記事を書いた人

徳山 友紀のアバター 徳山 友紀 大阪福島の着付け教室「ゆうきもの」代表 / 1級着付け技能士(国家資格)

1級着付け技能士(国家資格)・着付け講師。大阪市福島区で、きもの着付け教室「ゆうきもの」を運営しています。初心者向けレッスンから着付け師・講師養成まで対応。着付けご依頼、出張着付け(大阪市内限定)も承ります。

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